唐突ですが、江戸時代「武士の門限は午後6時」だったことをご存知でしたか?

いざという時に、戦いに駆けつけるためという理由でした。同じ理由で、夜遊びも禁止だったようです。
ちなみにこの小ネタを知ったのは、池波正太郎の本が大好きな私が、たまたま手に取った『大江戸 武士の作法』という本からでした。この本、おもしろいです。

参考:『大江戸 武士の作法』小和田哲男 (監修)/出版社: ジー・ビー https://www.amazon.co.jp/dp/4906993656?tag=dddev02-22&linkCode=osi&th=1&psc=1

武士のように24時間体制はないですが、今のテレワーク環境になり、この労働時間に対する意識が薄れてきたように感じます。

2019年4月から働き方改革関連法が順次施行されました。
主なポイントは3つでしたね。
(1)時間外労働の上限規制の導入
(2)有給休暇の確実な取得
(3)正規・非正規雇用労働者間の不合理な待遇差の禁止(2020年4月1日施行)です。
この働き方改革を考えるうえで、真っ先に語られることが多かったのが「長時間労働」。長時間労働を抑制し、残業を減らそうと組織改革に取り組む企業が増えていきました。

◆時短ハラスメント

時短の定義:『時短は、労働時間短縮のこと。労働基準法の週40時間制を受け、あらゆる企業に、時短に向けての努力が課せられている。この実現のためには、いかに労働生産性を上げて、コストを抑えるかがポイントとなる。』

その取り組み自体は当然進めなければならないものですが、その陰で問題になったのが「ジタハラ」。
『ジタハラとは時短ハラスメントの略称で、時短とは労働時間短縮のこと。
長時間労働を改善する具体策を提案しないまま、経営者や管理職が従業員に業務の切り上げを強要する行為。つまり働く人の労働時間を無理に短縮するなどの嫌がらせのことをジタハラと言う。』

取引先との調整で板挟みになったり、持ち帰り残業が発生して働き方改革どころか「隠れブラック企業」化の横行が懸念され、瞬く間にこの「時短ハラスメント(ジタハラ)」という言葉は広まりました。各種機関でも実態調査が行われるほどでした。
ワークライフバランス、生産性、働き方改革などのワードが先行して対策を考えずに現場に押し付けた結果、時短ハラスメントという形で社員を苦しめていました。

◆テレワークと働き方改革

今のテレワーク環境になり、この「時短」はどのように変化したのでしょうか。
①通勤時間が不要
 ⇒労働時間ではありませんが、この時間を仕事に活用
②会議、打合せの減少
 ⇒本来の業務時間にあて生産性向上
③訪問移動時間の減少(特に営業職)
 ⇒コンタクト機会拡大
などの結果を得られました。
本来の時短は「量」を減らすのが目的ではなく、限られた時間で成果を上げるために「質」を高めることが目的です。
ただ自分自身に置き換えると「今日はここまで!」のOFFスイッチが難しいと感じています。
メールが来ると、ついつい反応してしまうのです。
特に日時変更やキャンセルなどの調整業務。時間外は翌日対応がルールなのですが、お客様にとっても早めに連絡、調整したほうが助かるだろうという思いが強く、対応してしまう。

テレワークでも働き方改革をしっかり行うためには、武士のように「自宅にいる=仕事モード状態」では、いけません。
区切りが来たらPCの前から立ち去り、運動するなり本を読むなり、積極的なOFFモードに切り替えること。
テレワーク環境の整備が行き届いている企業は別でしょうが、対策が遅れ気味の企業では、従業員の実態確認は必須です。
テレワークと働き方改革を両立させることで、従業員の就労満足度を上げていきましょう。
それは企業の採用力にも結び付く活動となるでしょう。