株式会社帝国データバンクは2024年8月22日、「人手不足に対する企業の動向調査」の結果を発表しました。調査期間は2024年7月18日～31日で、全国2万7,191社を対象に、1万1,282社から有効回答を得ています。調査結果から、正社員および非正社員の人手不足割合が高い業種や、人手不足倒産件数の推移などが明らかになりました。
■正社員の「人手不足割合」は51％
近年の企業経営における課題の筆頭に挙げられるのが「人手不足」です。帝国データバンクによると、有効求人倍率の低下や就業者数の増加など、緩やかながら改善を示す傾向が見られるものの、雇用のミスマッチもあり、人手不足倒産は過去最多ペースで推移しているとのこと。では、2024年7月（調査時点）での人手不足の状況はどのようになっていたのでしょうか。はじめに同社は、過去13年における各年7月時点での「人手不足割合の推移」を明らかにしました。2024年7月時点における全業種の従業員の過不足状況としては、正社員が「不足」と感じる企業の割合は51％でした。前年同月比で0.4ポイント低下したものの、依然として5割を上回り、高止まりが続いています。また、非正社員が「不足」とした企業は28.8％で、前年同月から1.7ポイント低下。7月としては2年ぶりに3割を下回ったようです。

■人手不足割合トップの業種は「情報サービス」
正社員の人手不足割合を業種別にみると、主にIT企業が当てはまる「情報サービス」が71.9％でトップだったとのことです。唯一の7割超となり、人手不足感が際立っているようです。そこで同社は、「情報サービス業の人手不足割合」の月次推移を示しました。月次ベースの推移でみると、8割に迫った2024年初からは若干の低下傾向にあるものの、依然として7割を上回る高水準で推移しています。情報サービス業界はDX需要によって景況感も好調で、今後も堅調な需要の拡大にともない、人手不足は長引くと見込まれるとしています。

また、「正社員の人手不足割合」の上位10業種を見ていくと、「情報サービス」を含め8業種が6割台となっています。特に、時間外労働の上限規制が強化された「建設」は、69.5％と7割に迫る水準になりました。そのほか、若年層の不足が顕著な自動車整備や警備などを含む「メンテナンス・警備・検査」（65.9％）や、訪日客の増加によりインバウンド需要が好調な「旅館・ホテル」（65.3％）、トラック・軽貨物などの「運輸・倉庫」（63.4％）でも、人手不足が深刻となっているようです。

■「人手不足倒産」の件数も過去最多のペースで推移。“2024年問題”の影響強く
最後に同社は、「人手不足倒産の件数推移」を示しました。これを見ると、2024年上半期（1～6月）は182件発生し、過去最多を大幅に上回るペースで推移しています。また、そのうち建設業は53件、物流業は27件だったといい、それぞれ増加が顕著なことから、同社は「2024年問題が直撃した結果となった」としています。両業種とも人手不足が一因となってオペレーションが回らなくなり、業績が維持できず倒産に追い込まれるケースが続出したようです。

人手不足割合は正社員で51％と直近では前年同月比で低下したものの、高水準で推移していました。また、人手不足が深刻な業種においては、緩和に転じている場合もあるものの、依然として上位10業種の顔ぶれは大きく変わっていなかったとようです。各業界・業種ごとに、様々な要因で人手不足に陥っている。業界を問わず、人材の流出を防ぐには自社でしか得られないスキルや経験、給与水準などの差別化が必要となりそうですね。