近頃、ニュース等でも「深刻な人手不足に悩む企業がある」と言われていたり、一方で「就職難」で仕事がないという事象も見受けられます。
求職者は多いのに、人手不足に悩む企業が存在するというのは一見矛盾しているようにみえます。
しかし、人が定着しない会社には特徴があり、福利厚生が完備されていなかったり、社員間のコミュケーションが軽視されていたりとさまざまな問題を抱えています。離職率を改善するためには、どうしたらいいのでしょうか。
■なぜ「採用」ではなく「定着」が大切?
なぜ「採用」ではなく「定着」が重要なのでしょうか。優秀な人材を獲得するには、相手に働きたいと思われる企業であることが大切です。
就職活動をするなかで、企業を選ぶ指標の一つとして「働きやすさ」が挙げられます。定着率とは、その仕事に就いた従業員のうち、1~3年の間に仕事を続けた人の比率を数値に表したものです。
離職率はその逆で、その期間に仕事を辞めた人数の比率です。
離職率をみると、少し前の数字ですが平成27年は15.0%、平成28年は前年同様の15.0%となっています。多少の波はあるものの、ここ10年ほどではさほど大きな変化はありません。
(参照:厚生労働省|平成28年雇用動向調査結果の概況)
離職率が高いと、何か問題がある会社なのではないか、入社しても不安に思うのは当然ですよね。
そういったことを防ぐためにも、採用だけではなくその先の定着を重要視する必要があるのです。
■定着率が低い企業の特徴について
離職率が高く定着率が低い企業には特徴があります。
それは、社員の休暇日が定まらず労働時間が長いことです。休暇が定まらないことは飲食店などのサービス業に多くみられる特徴です。
勤務時間が長ければ、睡眠時間が削られて疲れやストレスが溜まりやすくなり、体調にも影響を及ぼします。
また、休日が不規則だと家族や友人と予定を合わせることが難しいため、プライベートの充実度が下がる可能性が高いため、退職につながりやすくなります。福利厚生がない、もしくは形ばかりで中身を伴っていない企業も低い傾向にあります。福利厚生には住宅手当や交通費手当も含んでおり、金銭的な面でも影響が出ます。
例えば、手当が付かなかったり低かったりすると給与は少なくなります。当然ですが、仕事に見合った賃金が得られなかった場合、働く意欲も損なわれてしまいます。
逆に福利厚生がしっかりしていると会社への満足度が高まり、意欲も上がります。他にも、評価制度の有無も影響を及ぼします。制度としての評価システムがきちんとしていれば、納得して働くことができます。
また、公平に評価されることでやる気も出ますし、評価が好ましくなかった場合でも評価項目が整理されていれば改善点を見つけやすくなります。
■離職を減らすには?「離職理由」を把握することが大切
それでは、離職数を減らすにはどうすればいいのでしょうか。
社員の働く上での不満や不安をできるだけ取り除いていくしかありません。社員の声を無視して企業が独りよがりな策をうっても改善しません。
社員が離職する理由を知って、それに合わせて解決策を打ち出していくことが大切になります。
例えば、離職理由に多く挙げられるものが「労働時間(残業)に不満がある」という意見です。
これは男女共に挙げられ、多くの企業が抱える共通の課題となっています。近年、長時間労働が話題となるニュースも多いです。
精神的に大きな負担を抱え、最悪の場合、命に関わる事態にも発展しています。勤務時間は、労働基準法によって1日に8時間、1週間で40時間までと決められています。
しかし、実際にはそれを超えた労働をしている人も少なくありません。
そのなかで、休暇を取りやすい環境作りや、風通しのいい会社作りが必要です。みなし残業などで賃金に不満がある場合は、みなし残業をなくしタイムカードできちんと残業を把握し見合った残業代を支給することが必要です。
離職を減らすためには、企業として社員を大切にすることで企業と社員の関係を築き上げていくことが重要です。
■企業が知っておきたい定着率向上のためのポイント
定着率を向上させるには、社員のニーズに合わせた解決策を講じる必要があり、問題は業種別にみることができます。離職率が最も高い業種は、「宿泊業、飲食サービス業」といわれています。
宿泊業は転職してキャリアアップしていくという考え方があり、他の業種で働いている人に比べると転職に対する抵抗感が少ないことも離職率の高い理由の一つかもしれません。
サービス業は他の業界に比べて休みが少なく、有給休暇取得率も低い傾向にあります。サービス業は、土日や祝日などが忙しくなるためです。
そのため、家族や友人と休みを合わせづらくなってしまうため、従業員数を増やし交代で休暇が取れるようにするなどの工夫が必要です。
医療関係も定着率が低い傾向にあります。看護師など女性が多いことが理由の一つです。
女性は男性に比べると結婚、妊娠、出産、育児といったライフイベントによって仕事から離れる期間が多くあります。そのため、出産しても復帰できるように、産休、育休の制度を充実し、周りのサポートや理解を得られる職場作りは重要です。
■まとめ
離職率を改善する具体的な試みは、はじめは手探りかもしれません。
企業の規模や業種によって、従業員の求めていることや実際の問題点は異なります。だからこそ、社内の声を聞く必要があるのではないでしょうか。
全員の要望に応えることは難しくとも、声を上げられる場を作ることはできるはずです。必要な制度や改善箇所は、社員とのコミュニケーションを通して少しずつみえてくるはずです。