人事のみなさんにとって「今さら・・・」なお話ですが、中途採用の現場では意外と扱いづらい『面接』について、あらためて考えてみたいと思います。
通常、中途採用の面接官は、配属部署の方や関係部署の役職者が対応されるケースが多いですよね。人事の方が同席されている場合は別ですが、面接官のみで実施している場合は、結果も含めて注視する必要があります。

■ 面接は成果が見えにくい

面接という選考手法には、「成果の曖昧さ」がつきものです。
面接は、候補者が合格か、不合格かのいずれかを選択するもの。しかし、その判定が本当に適切だったのかは時間がたってもわかりにくいものです。
採用した人が入社後1~2年は期待した成果を出せなかったとしても、それだけで採用ミスとはいえないでしょう。
一方、不合格とした候補者はさらにわかりません。もし、能力ある候補者を不合格としたとしても、それによる自社の損失を確認することはできないですから。

■ 面接は「合格より不合格が楽」

そう考えてみると、面接は「不合格のほうが楽」です。
合格とした場合、候補者を次の選考に進ませるために、次の面接官に対する申し送り事項などの説明責任が生じます。
候補者の何を評価したのか、懸念点や再確認して欲しいポイントなど、面接で得られた事実も踏まえ、次の選考へ進める理由をしっかり説明しなければなりません。しかし、確信を持って合格を出せる候補者に会えることもさほど多くないでしょう。
大抵は、多少迷いつつも「どちらかといえば良さそうだから合格だな」と判断することも珍しくありません。
面接で合格の判を押すには、少なからず「期待値」の要素が含まれているといえます。一方、不合格とすれば話は簡単です。不合格とした理由を詳細にヒアリングされることは滅多にありません。
また、2次面接以降で不合格とする場合は、前の選考で合格と判定した面接官と意見のすり合わせを行うこともありますが、前の面接官の方が役職が上であることも少ないため、負荷はそれほど大きくないでしょう。
こうしたことから、面接は「不合格のほうが楽」なのです。

■「原石」を拾えるほど、採用力は高まる

このような背景から、面接官は「合格させたくない」という思考になりやすいものです。
素晴らしい実績や属性といった明確な評価ポイントから「採用したい人材です」と胸を張って言える候補者でなければ、不合格としたほうが無難と判断してしまうのです。
しかし、明確な評価ポイントを持つ候補者は誰にでも判定できるため、そんな候補者“だけ”を合格させていては、競争の激しいコアターゲットのみで採用活動しているようなものです。
競合他社が強ければ入社には至らず、結果的に採用力が落ちてしまうのです。合格させる明確な評価ポイントがない候補者でも、その候補者の持つ行動・思考パターンなどから、将来自社でも期待できる成果、貢献を想像することは可能です。
そこに賭けることができれば、他社との競争は少なく、良い人材を採用することができるかもしれません。いわゆるポテンシャル採用ですね。
まだ目を見張る成果や実績を携えているわけではないが、磨けば輝くであろう「原石」をどれだけ見つけることができるかで、採用力の高さが決まるのです。

■「合格させる勇気」を持とう 

「原石」を見つけるには、面接官に「合格させる勇気」を持ってもらうことが必要です。
面接の基本は、候補者の具体的な仕事のエピソードなどを聞きながら、行動事実やパーソナリティー、能力を判断できる具体的な事実を多く集めることです。
そうした中で明確な評価ポイントを見つけ、合格の判定を下すべきですが、「限られた時間の中で明確な評価ポイントは見つからなかったけれど、良さそうな気がする」という場合も、勇気を持って合格とするべきです。
そして、次の面接官は、自身が不合格と判断したとしても、前の面接官を叱責してはいけません。
不合格にした理由のフィードバックは大切ですが、そこで叱責してしまうと、その面接官には「落とすほうが楽」という心理が働き、「明確な評価ポイントがない限りは合格させないようにしよう」と考えるようになってしまいます。
高い採用力を維持するために大切なのは、面接官に「合格させる勇気」を持ち続けてもらうことなのです。

■ 不合格が多過ぎる?簡単にチェックしてみましょう

「落としすぎている」という状況に陥っていないか、簡単にチェックする方法があります。それは面接1回あたりの通過率を見ることです。
「面接の通過率は、会社や職種によって異なるだろう」と感じる方もいるでしょう。確かにその通りですが、ここでは簡単にチェックするため、平均値といわれる30%を基準に判断します。
中途採用の場合は、面接2回で合格率10%というのが平均的ですので、面接1回あたりの通過率は約30%になります。
この30%という数字は、多くの企業が試行錯誤してたどり着いた結果なのです。ですから自社の面接1回あたりの通過率が30%以下の場合は要注意です。
面接は避けて通れない選考方法ですが、面接官への依存度が高いので、精度にブレが生じるのは致し方ありません。
でも、たとえば、自社の通過率が10%台だったら「落としすぎている可能性がある」と考えましょう。面接1回あたりの通過率は、労力の許す限り高くしたほうが「原石」を採用しやすくなります。みなさんも再確認してみてください。