人材紹介について、採用担当のみなさんへお尋ねすると大抵、次のような会話になります。
採用担当者:「人材紹介会社とは数十社お付き合いはあるが、実際の稼働しているのは数社ですね。」
当社:「もっと稼働してくれる会社を増やさないんですか?」
採用担当者:「労力もかかるし、あまり意味があると思えないんですよ。」
確かに、そのお付き合いの仕方によっては、そのような結果になることもあるでしょう。でも違う結果を生む可能性も当然あります。
今回は、人材紹介会社と良いリレーションを築く大切さを見直していきます。
■人材紹介会社は同じゴールを目指すパートナー
採用プロセスの工程は、候補者集めと選考の2つに分解できます。
人材紹介会社や求人メディア会社など、採用ビジネスの多くは前者を取り扱います。最終的な意思決定を含む後者は自社の採用担当者(&配属部署)が担いますね。
人材紹介会社は貴社にとって外注先でありますが、このように分けると、自社の採用力を左右しかねない重要な存在であることも理解できるでしょう。
つまり本来、採用担当者と人材紹介会社は「採用成功」という同じゴールを共有していなければならない大切なパートナーなのです。
■「チャレンジ提案」を許容できなければ採用力は低下する!?
ところが、面接官の中には両者の関係性を正しく認識していない方もいます。
人を紹介する業者のように扱ってしまうのです。
たとえば、人材紹介会社からの提案の扱いにもそのスタンスが垣間見れます。
発注時に設定した人材要件に対して、その要件を多少満たさなかったとしても、「チャレンジ提案」としてポテンシャルが見込める人材も提案するものです。
しかし、この提案に対して「オーダーと違う」と単純に非難してしまいます。
面接官の方も自分のお仕事を抱えながらの対応なので、そうしたジャッジをする気持ちもわかります。
なるべく業界未経験者などを含めずに、経験者だけで選考に進めた方が、ミスマッチは起こりにくいのも確かです。
しかし、人材要件を満たした候補者だけに絞り込んでしまうと、候補者は圧倒的に少なくなり、採用というゴールにたどり着けないという状況に陥ることも少なくありません。
人材紹介会社はその点を見越して「チャレンジ提案」をするのです。
この提案をある程度は許容できるようでなければ、「あの会社には人材を紹介しても通らないから工数をかけて紹介するだけムダだ」と思われ、まったく提案されなくなる可能性もあります。
つまり、人材紹介会社に対して柔軟性を持たない態度は、「自社の採用力を下げている」かもしれないのです。
■不採用の可能性が高い候補者との面接
こういった面接官の方々に「業者扱い」の態度を改めさせるには、人材紹介会社の「チャレンジ提案」を受け入れることによって増加する面接への意味づけが必要です。
とくに、「人材要件を満たさない=不採用の可能性が高い」候補者との面接に対する意味づけが重要となります。
そこで不採用の可能性が高い候補者との面接を「自社のファンを作る場」と意味づけることはどうでしょう。
不採用の可能性が高い候補者であっても、お客様として再び出会うことがあるかもしれません。
しかし、不採用の可能性が高いからといって失礼な態度をとり、候補者が心証を害してしまっていたら、未来のお客様を逃してしまうことにもなります。
人材紹介会社を業者扱いするような面接官は、採用できないとわかった時点で候補者をぞんざいに扱いかねません。
つまり面接官の態度によって「人材紹介会社」と「未来のお客様」のいずれも失ってしまう可能性すらあるのです。
そうならないためにも、人材紹介会社の「チャレンジ提案」を受け入れ、たとえ不採用の可能性が高い候補者との面接が増えてしまっても、その面接を候補者に「いい会社だった」と思ってもらえるような場にすることをおすすめします。
■人材紹介会社から良い助言も得て自社の採用力を上げる
人材紹介会社とパートナーとして付き合えるようになると、自分たちだけではなかなか気づかない客観的なアドバイスを得られます。
面接官は当然、自社の事業や組織、メンバーの状態、どんな人が自社に合うのかについて、詳しい情報を持っています。
その半面、「転職市場にどんな人がどれだけ存在するか」「自社を採用競合と比較したときの相対的なポジション」などについては、意外とわからないものです。
かたや人材紹介会社は、転職市場全体が見える立場にいます。
それによる知見を生かし、採用のレベル感や質などに関する助言、採用要件の改善提案など、価値の高い情報を与えてくれます。
採用力を上げるためには、面接官も人事と連携して人材紹介会社と良いリレーションを築く必要があるのです。
中途採用市場での求人数は、1年前より大幅に増加しています。
ゆえに「提案を受け入れない会社」に、あえて採用支援をしようとする人材紹介会社は少ないでしょう。
人材紹介会社から見れば、提示された人材要件に沿って提案したにもかかわらず、結果が出ない責任をなすりつけられるかもしれませんので、当然の流れだと思います。
自社の要望を簡単に曲げろとは言いませんが、人材紹介会社を業者扱いするのではなく、きちんとパートナーとして真摯な態度で接することが大切です。
人材紹介会社をうまく活用すれば採用力は上がります。
人事担当だけでなく、採用に関わるすべての方が自社の採用力向上の一翼を担っていることを認識して、人材紹介会社とのパートナー意識を向上させましょう。